Bombye Japan Tour Log Vol.8

Bombye Japan Tour Log Vol.8

Bombyeのツアーもファイナル目前を迎えた。5月の来日から、彼らと過ごした約2週間は本当に思い出深いものとなった。日常では見ることのできない景色を沢山見せてくれた。そして、過ごしてきた時間が増すほど彼らに対しての思い入れも深くなっていった。

 

今回のツアーのメインステージになる6月6日(金)の下北沢ADRIFTでの公演を迎えた。

日取り決定から始まり、会場選定、演出を考えるとともに、共演者を選び、機材の手配し、一つの公演を開催するだけでも多くの人に協力してもらった。そして、多くの時間を費やした。そんな、長いように思える道のりも、走り出してしまえばあっという間に当日を迎えた。その労力と熱量の分だけ、POOL SIDEスタッフ一同もその日が楽しみで仕方なかった。

出演者の分だけリハーサルにも時間がかかる。ライブの時間だけを楽しむのではなく、ライブ当日を充実できるようPOOL SIDEのPOP UPの準備にも時間を要した。

17時半の開場を前に、14時を迎え続々と出演者が集まってくる。同じくしてPOOL SIDEの物販ブースの準備もスピードアップしていった。


ADRIFTでの公演を開催するにあたり、POOL SIDEが開催するからこそのラインナップを用意したかった。

5周年イベントの際に出演してくれたHanah Springさん、笠原瑠斗さんの出演は絶対に外したくなかった。ニックと同じくハートに声を届けることのできる"ソウル"シンガーだと思っているからだ。

そして、佐久間龍星さんは先の2人とも共演があるのに加えて、彼らとは少し違った歌声でハートに声を届けることのできるシンガーだ。とはいえ、三者三様の魅力と特徴がありながらも、三者の持つ空気感はとてもクリアでハートウォーミングだ。

そこにスペシャルな演出としてCaptain Vinylを招いて、耳の肥えたミュージックラヴァーをワクワクさせるDJセットを用意したかった。NORIさん、MUROさん二人でのDJセットにはいつもワクワクさせられる。それぞれの多角的な音楽性がどんなDJとも違ったグルーヴをいつも生み出している。「ハワイのアーティストのライブ」「POOL SIDE企画」というキーワードが枕詞としてありながらのDJセットが楽しみでしかなかった。

もちろん、今回のライブにもDJ KENTAさんは必要不可欠な存在としてオープニングを担当してもらった。POOL SIDEが考えるストーリーに無くてはならない存在だ。

 

出演者たちのリハーサルが始まり、順調に開演に向けて時間が進んでいく。開場外には少しづつお客さんの姿が見え始め、"いよいよか・・・"と身が引き締まった。

ライブは盛り上がるのだろうか、人は来てくれるのだろうか、そんな不安の一方でBombyeの生でのライブを観て、どれだけの人が"クラう"のか楽しみでもあった。

そんな我々の気持ちを知りもせず、Bombyeは本番開始まで下北沢散策に出かけると言う。この時、開演前の会場を離れ自分の時間を過ごしていたのはCaptain VinylとBombyeだけだったのは、ここだけの話にしておこう(笑)

 

いよいよメイン公演となるADRIFTの準備は整った。

トップバッターのDJ KENTAさんによるDJセットでお客様を迎え入れる。渋谷の夜の街で見る顔がしっかりと揃っている。何度も彼のセットを見ているであろう人が、再び音と求めて訪れるというほど、DJとしての魅力に溢れている。そんなDJは日本中を探してもそうはいないだろう。会場の温度はしっかりと温まっていた。

 

前半のライブは佐久間龍星からスタート。

沖縄出身の彼は、爽やかで温もりのある歌声に、優しい性格なのがよく分かる歌い口を感じる。若者らしく、ボイスパーカッションなどいろんなことができるのも魅力だ。アップテンポの曲に始まり、メロウなバラードと観る人を飽きさせないセットリストだ。

続いて、笠原瑠斗が登場する。ご存知の通り、現代には珍しいスモーキーな香の漂う北海道の生んだソウルシンガーだ。力強い歌声と、音楽をその場で奏でるスタイルはニックとも通づるものを感じる。地元にしっかりと根を張っているところも似ているのかもしれない。そんな彼もNick Kurosawaのファンの一人だ。

2022年に彼の代表作ともなっている「Walking Man」は多くのR&Bラヴァーを唸らせた。その他にも北海道のラッパーBIG JOEとの共演作「ONE」など多くのヒット作を持ち合わせているともなれば、出演時間20分は短く感じたかもしれない。

ここからはHanahタイムがいよいよスタート。アコースティックスタイルでの弾き語りと歌声を一度目の当たりにすれば虜にならない人はいないだろう。

初めての出会いは2022年の鎌倉で開催されたKeep Your Head Up Tourだった。長かったコロナ禍では人は長らく感情の発散どころを失っていた。少しづつ制限が軽減された頃、笠原さんとの共演を眼の前で見て衝撃を受けた。その衝撃はニックを生で見た時と近い感触だったような気がする。心が動かされていく、勝手に視線と耳が惹きつけられた。

二人のデュエットソングでもある「Mellow 90s」と「Keep Your Head Up」は圧巻だった。今となれば笑い話だが、急遽開催されたジャンケン合戦もまた圧巻だった(笑)

時間はあっという間にCaptain Vinylの時を迎えた。適度にお酒の進んだ聴衆は心地よいリズムとサウンドに酔いしれていく。Bombyeライブ目前を迎えバタつくPOOL SIDEスタッフを尻目に、Bombye本人達は全力で踊って楽しんでいる。微笑ましい光景に思えたとともに、彼らにとって音楽が日常において身近な存在であることを感じた。音が流れている、良い音ならそれを楽しむだけ。きっとそんな感じなんだろう。でもこれは、ハワイ出身の彼らだからというわけではない。

ロサンゼルスに行っても同様に、ミュージックバーでBoz Scaggsのサウンドに若者達が盛り上がっているのをみると、もちろん言葉の影響もあるが、きっと音楽が生活の一部としてインプットされているからなのだろう。

Captain Vinylが時たまハワイの音楽をセレクトする。POOL SIDEでハワイのレコードを常用しているメンバーは思わず手が上がっていた。本当に極上の演出だった。

Bombyeの出演5分前を迎えてもなお、彼らはフロアで盛り上がっている。慌てて招集しタイムテーブルの確認とセットリストの確認を行うが、気持ちはしっかりとステージに向けて前のめりだった。

そして、我々が長い間待ち侘びたBombyeのステージが始まり、今までの数年間のストーリーが走馬灯のように頭を駆け巡った。コロナ禍でハワイを離れていた期間があり、彼らの活動とリリースも足止めを余儀なくされた。その間に彼らを取り巻く環境や生活も変わった中、今ここのステージでライブを行なっていることを思うと、人生とは数奇なもので、誰もが予想できない景気を見ることができるのかと感慨深くなった。

曲数を重ねるごとにBombyeの熱量も高まっていくのがわかった。DJブースに立っていたDJ KENTAさんが「今日はニック全開だな」ぼそっと口にした。何度かライブを目の前で見ている人が分かるほど、彼らも熱くなっていたのだと思う。

バックステージからフロアを覗くと、息を呑むように見守る人、涙ぐむ人、それぞれが熱い視線を向けていた。ADRIFTでの公演に訪れた人の多くは曲も聴いたことのない人だったにも関わらず、彼らの演奏に引き込まれていた。

今となれば予定調和ではあるが・・・アンコールの時間を用意していた。

ステージから引き上げる彼らのテンションはとても高かった。あそこまでテンションの高いニックの姿を見たのは初めてだっただけに、このライブを彼ら自身も楽しんでいたのだろう。

 

一息ついてからステージに戻るのかと思いきや、こちらの引き留めに目を向けず、テンションそのままにすぐさまステージへと戻っていった。(早すぎだって・・・笑)

アンコールソングはツアーの中で最も好評だった「Grant Urismo」と新曲の「Six Eight」だった。贅沢で充実した時間は本当にあっという間だった。きっと、訪れていた人も皆同じ気持ちだったのではないだろうか。

 

明るくなった会場には笑顔に溢れるお客さんの姿で溢れていた。

その光景を見て、自画自賛のようになってしまうかもしれないが、本当に良いライブだったように思えた。

海外からアーティストを呼んでツアーをするというのは、POOL SIDEのような小さな会社にとってはリスキーで体力を消費する。そんなことは思い立った時から分かっていたが、彼らの音楽を広め、彼らの音楽を通じて共感する。そんな瞬間が味わいたかったんだろう。

そう思わせてくれる、彼らの存在と音楽にはリスペクトしかない。

翌日にはツアーファイナル・・・

の前にYour Song Is Good Billboard Tokyoワンマンライブにゲスト出演があった。彼らは私にどこまで色んな景色を見せてくれるのだろうか。