Bombye Japan Tour Log Vol.9

Bombye Japan Tour Log Vol.9

下北沢ADRIFTでのライブを終え、Bombyeを宿泊している部屋へ送り届けた。ライブが終われば彼らも、「ファミマ」に行きたいと、いつも通りの姿に戻っていた。その姿に"らしさ"を感じられ、どこか安心感があった。

ライブの高揚感、やり切った充実感、無事終えることのできたことに安堵していた。ファイナルを迎える寂しさと、明日への楽しみと色んな感情が交錯していた。

 

最後のライブの当日を迎えた。最終日はとても慌ただしい1日だ。

昼過ぎから六本木へリハーサルに向かった。ニックがYour Song Is Goodのワンマンライブにゲストとして参加するためだ。Billboard Tokyoといえば、選ばれたアーティストのみがステージに立つことのできる会場だ。音響、演出、会場、全てがトップクラスの環境だ。そんな場所でNick Kurosawaがパフォーマンスをする日が来るとは想像もしていなかった。

リハーサルの時間を迎え、サウンドチェックを行いながら、Your Song Is Goodとセッションしている姿は今でも脳裏に焼き付いている。

リハーサルを終え、開演まで少し時間があったので、ニックを引き連れランチへと出た。1時間後にライブをするアーティストがミッドタウンのレストランでビールを飲みながらピザを食べているというギャップがおかしかったが、実にニックらしい。

 

「We don't need have to eat(元の歌詞:We don't even have to talk)Because too much Pizza~(元の歌詞:We can stare at the walls)」と呑気にOmmaの替え歌を歌っている。そういう環境に影響されることも、驕ることもしない自然体の姿でいられるところが彼の魅力なのだろう。

ライブ前にBillboard Tokyoの楽屋に案内された。壁には海外の有名アーティストのライブポスターとサインが飾られていた。やはり楽屋や控室というものには独特の空気が流れている気がする。ピリッとしているのとも違う、排他的な空気でもない、クリエイティブな空間に変貌するように思える。その会場でライブをするアーティストだけが出せるライブ前に醸し出すオーラと空気は、外者が簡単に触れることのできない独特なものだ。

楽屋でYSIGが準備をしている横でニックも衣装に着替え準備を行なった。ライブ前の輪にニックも加わり準備が整った。

ライブへの出演は最後のアンコールの時だったので、そればではフロア脇でYSIGのライブを見守った。YSIGのサウンドに合わせて会場中がノってくる。お客さんの手拍子や歓声が沸く。プロのアーティストとしての姿もかっこよかったが、それぞれの演奏に徹しているミュージシャンとしての姿が本当にカッコ良かった。

 

ライブも終盤を迎え、スタッフに案内されニックも準備に入る。

皆がニックのイメージをどう持っているかは分からないが、ライブ前にも関わらず友人と戯れ、ビールを飲んでいる陽気なイメージがある人が多いのではないだろうか。

これは私だけが見てきた姿かもしれないし、少し大袈裟な表現かもしれないが、ライブ前に彼もゾーンに入っている。ストレッチをしながら、発声練習をしながら、集中モードに入る。

その時ばかりは私も何も話しかけずに一人の時間を作るよう心がけていた。ただ、控室から聞こえてくる歌声が、とにかく良いのは誰もが容易に想像できるだろう。

フロアからのアンコールに応え、YSIGとニックがステージへと上がった。

「We Are Not To Blame」と「Omma」に2曲をセッションした。ライブに来ていた人たちがニックを知っていたかどうかは分からないが、歌い出した瞬間に歓声が上がったのと、スマホで動画を撮る人が沢山いたのを見ると、きっと良いライブだったのだろう。

アーティストとして活動しているからといって、簡単に上がることのできないステージに招いてくれた、サイトウ”JxJx”ジュンさんには感謝しかない。そんなステージで歌うニックの姿を想像したこともなかった。ニックの歌声が素晴らしいからと言って、今回のようなコラボレーションや、このような場所でのライブを誰しもができるわけではない。そして、アーティストに関わる人間誰もがこの景色を見れるわけではない。誰もが見ることのできない景色を見た気がした。

ライブを終えて控室に戻ってきたニックの顔は満面の笑みだった。最高のステージでライブこそアーティストとしての醍醐味だと思う。そんなステージを体験した彼は本当に楽しげだった。

談笑しながらライブの余韻に浸る暇もなく、ツアーファイナルの会場となる日本橋Air Buildingへと移動する。もうすぐbombyeのツアーも終わりを迎えようとしていた。

 

すでにイベントが始まっている会場へ着くと、ニックが到着するのを待っていた人達が沢山いた。到着するなり、荷物を置く暇もなく囲まれる。ツアーファイナルはレコードリリースをしているConnect Recordレーベル主催のイベントともあり、ニックとも関わりの深いメンバーが多くいた。久しぶりの再会というレーベルメンバーもいれば、制作はやっていたが直接会うのは初めてというメンバーもいた。いつもの仲間が日本橋に集まった。

POOL SIDEとしても物販担当としてPOP UPを行なっていたこともあり、名古屋のツアーをともにしていたメンバーや、いつもの常連さんも集まっていた。アフターパーティーとも思える暖かい空気に会場は包まれていた。

ライブ前の時間を使い方はいつも通り、Bombyeメンバーそれぞれが自由に過ごしている。DJブースの前でビールを片手に首を縦に振るニック。ソファに座ってクールに雑談するサム。フロアを上がったり下がったり、見かけた人とふざけた話をするアンドリュー。本当に微笑ましかった。

最後のライブの時が来た。最大動員数30-40人程の会場はライブ前にあっという間に入りきれないほどの人が集まった。色んな想いを持って最後のライブを観に来ていたのではないだろうか。

ツアーの最初のライブから欠かさず観ていた人、ずっと前から彼らの存在を知っていてやっと観に来れた人、6年ぶりのライブを待ち侘びていた人、ツアーで彼らを知って追いかけてきた人、そんな感じだったのではないだろうか。

ツアーファイナルの最後のステージは、私にとってはいつもと違ったものに映った。ワクワクしながら、ライブを楽しんでいた今までとは違った。このツアーのハイライトのようなライブであり、彼らの未来を感じていた。

最後の曲は「Six Eight」。そして、最後のステージが終わった。

最後の演出として、DJ KENTAとニックによるタイトルの生ライブを行なった。Connect Record主催だからこその演出だった。二人がフロントに立つ姿は感慨深いものがあった。

会場の片付けを終え、POOL SIDEチームは店へと戻る。店へと帰る荷物を載せた車の中で肩の力だフッと抜けた。

 

そして、BombyeのJapan Tourが終わった。